不動産投資家、必見!投資用マンションの買換えに「特定の事業用資産の買換えの特例」は適用できるのか?

■活況を呈する投資用マンション

 

 

日銀の金融緩和・低金利政策によって金利が低めに誘導され、それに伴い銀行預金が殆どつかない状況ですが、それと逆相関に不動産投資が熱を帯びています。

 

 

銀行口座に置いていても、金利はほとんど付かない、年金も将来貰えるか不安だという状況では、毎月とりあえずキチンと家賃収入が入ってくるワンルームマンション投資は魅力的です。

 

 

そんな中、とある方から質問を受け、調べたのが標題の「特定の事業用資産の買換えの特例」についてです。

 

 

■「特定の事業用資産の買換えの特例」の大まかなルール

 

 

この特例を簡単に言うと、国内の事業用資産(土地、建物、機械、工場など)を買い換えた場合、要件に合致すれば、譲渡益が圧縮される、つまり所得税が安くなるというものです。

 

 

ざっくりした、大まかな要件は以下の通りです。

 

 

〇令和2年中までに事業に使用している物件を売却すること。(一部のものは、令和2年3月31日まで)

 

 

〇売却する物件を10年超、(売却する年の1月1日現在で)所有していること。

 

 

〇物件を売却した前年から翌年の3年間に他の事業用資産を取得して、その取得した1年以内に使用すること(つまり、新物件を先に購入してから、物件を売却することも可能。購入した年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署に提出することが必要です。)

 

 

〇売却する物件と購入する物件の組み合わせは8通りあり、特例を使うにはこの組み合わせのいずれかに合致する必要があります。

 

 

〇売却物件の売却価額と購入物件の金額のいずれか低いほうの金額の80%は売却がなかったものとして、譲渡所得の課税の繰り延べが認められます。

 

 

以上の要件は、イメージをつかんで頂くため、かなり大まかに書いています。

 

 

 

そして、8通りの組み合わせは、売却する資産と購入する資産について、細かく条件が記載されています。

 

 

これらに合致しないと特例を適用して税額を低くしようという目論見が崩れますので、実際に特例を適用して不動産を売却する、購入するという場合は、事前に税理士に相談することを強くお勧めします。

 

 

■今回の問い合わせのケースは

 

 

今回、問い合わせ頂いた方は都内23区内に投資用ワンルームマンションを3戸所有しており、それらを売却してタワマン1室に集約したいので、特例を使えないかという問い合わせでした。

 

 

この方のワンルームマンションの所有が10年超かは定かではありませんが(それを確認する前に特例を使うことを断念しましたので)、仮に10年超所有しているのであれば、特例の適用は出来たのではないかと思っています。

 

 

最初に問い合わせ頂いたときは、複数の物件を売却して一つの物件を購入するのは無理だろうと思ったのですが、調べていくうちに可能であることが判明しました。

 

 

何事も予断は宜しくありません、勉強になりました(^―)

 

 

■今回の相談者の結論は

 

 

結局、今回の相談者の方は現在所有のマンションを売却するのをやめて、しばらく所有するという結論を下しました。

 

 

所有している間は賃料が入ってくるという理由もありましたが、それとは別に僕が説明したことで、特例適用が必ずしもお得ではないと分かったからです。

 

 

〇特例を適用しても、買い換え時点での譲渡所得税が低くなるものの、新物件の購入価額が低く算定されるので、それ以降の不動産の減価償却費が低くなり、その結果、毎年の所得税が特定を適用しない場合に比べて高くなる。

 

 

〇新物件は旧物件の取得金額を引き継いだ価格で取得価額が算定されるので、新物件を売却するときは、譲渡所得が多めに計算される可能性がある。

 

 

〇新物件を5年以内に売却すると、短期譲渡所得として課税(税率39.63%)されるので、慎重な検討が必要になる。

 

 

■税金のことだけを考えると本末転倒に

 

 

誰でも税金を安くしたいと思うでしょうが、まず考えなくてはいけないのは、事業として上手に回していくことです。

 

 

その点がクリア出来たら、その次に税金のことを考えるほうがクレバーだと思います。

 

 

僕が相談者の立場であれば、現状の不動産市況は良いので、いったん売却するでしょう。

 

 

そして、その後のマンションの価格動向を見て、タワマンの金額が納得いく金額であれば買うし、思ったほど下がらないのであれば、運用はその時に考え直します。

 

 

 

高い金額で売り、安く買うことが出来れば、特例など使わなくても高い投資パフォーマンスを発揮できます。

 

 

投資熱が高いとどうしても前のめりになり、買い急ぎがちですが、いったん様子見というのは案外に(あくまでも過去においては)有効な戦術です。

 

 

■まとめ

 

 

あくまでも、「特定の事業用資産の買換えの特例」は、買換え時の譲渡所得が低くなるが、その後は税負担が重くなるものです。

 

 

所得の高い人(税率も高い)が適用すると、新物件を10年も保有すれば、特例を適用しないほうが減価償却費の関係で、トータルで税金的にお得になることも十分あり得ます。

 

 

かといって、5年以内で短期に譲渡すれば、高い税率が適用されます。

 

 

不動産の運用においては、所得税、固定資産税、固定資産取得税、登録免許税など、税金が密接にかかわってきます。

 

 

しかし、税金にばかり気を取られていると、肝心の投資パフォーマンスが落ちてしまいます。

 

 

新たな物件は長期保有が目的か、含み益が出れば短期で売ってしまうのか、など戦略的に運用を考えないといけません。

 

 

不動産に関わる税金は、税額が高くなることが多く、相続税、贈与税はもちろんですが、売却に伴う譲渡所得も税額が高くなりがちです。

 

 

今回書いた「特定の事業用資産の買換えの特例」は、要件に合致するのか否かだけでなく、その後の運用まで考えると、包括的な検討が必要になります。

 

 

もし、特例の適用をお考えであれば一人合点することなく、知り合いの税理士にお尋ねすることを強くおススメします。

 

 

*今回の解説は、分かりやすく書くことを優先しております。

 

具体的な判断においては、税理士等専門家にお聞きするようお願い致します。

 

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