「設立2年目までの法人は消費税が課税されない」は本当か?
個人事業主の方や経営者の方は税金リテラシーの高い方が多く、消費税に詳しい方もいて、法人を設立したら消費税が初めの2年かからない(ことがある)というのをご存知の方も多いです。
今回は法人設立から消費税がどう関わってくるのか、確認したいと思います。
① 最初の2年が免税になる理由とは
②「最初の2年を免税=お得」では無いこともある
③「課税事業者選択届」を提出したら、2年縛りまたは3年縛りがある
④ そもそも最初の2年が免税にならないこともある
⑤ まとめ
では、順番に見ていきましょう。
① 最初の2年が免税になる理由とは
消費税は「売上に伴う消費税」から「支払いに伴う消費税」を差し引いて計算されます。
そして、すべての会社がいきなり消費税を支払うようになるのか、というとそうではありません。
例えば、A社:2018年の1月1日に設立された会社なら、2018年と2019年は一定の場合を除き(*④参照)、消費税が課税されません。
ここでキーになるのが「基準期間」という概念です。
課税事業者(消費税の納税義務者)になるか否かは、基準期間の課税売上高(消費税が課税される売上)が1,000万円超であることが条件となります。
ここでいう基準期間とは、2期前(前前期)の期間のことを言います。
法人を設立した後、2期目までは、そもそも基準期間が存在しないので、法人設立から2年間は消費税が課税されないということになる訳です。
②「最初の2年を免税=お得」で無いこともある
例えば、設立1年目に多額の設備投資をした場合、「売上に伴う消費税」<「支払いに伴う消費税」になることが予想されます。
大体において、設立1年目から課税売上が多く立つということは考えられませんので。(特段の事情、例えば関係会社からの多額の課税売上が見込まれるなどは例外ですが)
【例】2018年1月1日設立のA社1年目
「売上に伴う消費税」 =100万円
「支払いに伴う消費税」=150万円
そして、設立1年目の会社が「売上に伴う消費税」<「支払いに伴う消費税」であり、かつ、課税事業者であるならば、その差額が税務署から還付(払い戻し)されます。
資本金1000万円未満の会社の場合、設立1年目の会社は免税事業者となるので、上記の還付を受ける予定であるならば、予め1年目の期中に「課税事業者選択届」なる書類を税務署に届け出る必要があります。
この届出を提出しておかないと、「売上に伴う消費税」<「支払いに伴う消費税」であったとしても、その差額の消費税は還付されませんので注意が必要です。
上記の例にならえば、「課税事業者選択届」を提出していると差額の50万円が還付される訳です。
つまり、設立1年目の会社であっても初年から多額の消費税を支払う見込みがある場合は速やかに「課税事業者選択届」を提出しておいた方がお得と言えます。
③ 「課税事業者選択届」は2年縛り、または3年縛りがある
そして、還付目的であれいったん提出した「課税事業者選択届」の効力は2年間または3年間に渡って発揮されることになります。
つまり、設立から2期目、場合によって(特定の固定資産などを購入した場合などが該当)は3期目まで、売上が1000万円以下でも課税事業者となります。
今年(設立1年目)は課税事業者となって消費税を還付してもらい、来年からは、“また免税事業者にあと戻りしましょう”といった良いとこどりは出来ないルールになっています。
④ そもそも最初の2年が免税にならないこともある
消費税法のルールでは、資本金が1,000万円以上である場合、設立1年目だからと言って免税事業者になることは出来ません。
初年度から消費税の課税事業者になります。
また、資本金が1000万円未満の場合に消費税が課税されないのは、1年目のみであり、2期目が免税になるには次のいずれかに該当する必要があります。
・特定期間(前期の会計期間の最初の半年間)である2018年1/1~6/30に課税売上高が1,000万円以下であること。
・特定期間の給与などの総額が1,000万円以下であること。
又は給与など1000万円以下
⑤ まとめ
消費税は会社の利益とは関係なく、課税事業者であれば納税義務が生じるのである意味手ごわい税金です。
会社にお金が無くても課税されることもありますので。
また、「課税事業者選択届」など各種届出を提出する必要があり、提出したらしたで、その後の数年の縛りもあることから、経営者や税理士にとっても選択に気を使う手ごわい税金です。
今回は設立後間もない会社に的を絞って消費税のことを書きましたが、簡易課税や原則課税の選択など気を使うシーンは他にもたくさんあります。
各種届出も前期までに提出する必要があるので、タイミングを逸すると本来受けることが出来たはずの還付なども受けることが出来なくなります。
消費税はことさらに税理士などとコミュニケーションを密にする必要があるのは、それらが理由なのです。
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